フォルテピアノ

主に18世紀のモーツァルト時代のフォルテピアノを使って、バッハの息子達やモーツァルト・ハイドン・ベートーヴェン(初期~中期)などを18世紀の演奏慣習を追体験しながらレッスンしていきます。

また、これら全ての作曲家の「心と創造の源泉」であったクラヴィコードにも積極的に触れ、ピアノ音楽の創作にどれだけ影響を及ぼしたのかもひもといていきます。

それらに馴染んだ後は、あまり知られていないモーツァルトの同世代作曲家達やスペインなど南欧地域のフォルテピアノ作品などにも触れていきます。

~使用楽器~

この18世紀のフォルテピアノ(ハンマーフリューゲル)はブリュッセル博物館所蔵J・A シュタインの1786年製を忠実に復元したものです。シュタインのハンマーフリューゲルは、モーツァルトもその性能の素晴らしさに歓喜し、興奮して父親宛にその詳細を書き送った手紙がのこされていることでも有名です。後にウィーン式と呼ばれるこの軽やかなアクションがハイドン、ベートーヴェン、シューベルトやシューマンに至るまで魅了しました。

この1786年製のモデルは、ヴァルトシュタイン伯爵が17歳のベートーヴェンにプレゼントしたものと同型で、18世紀末のチェンバロと同じ5オクターブですが、このフォルテピアノの響きが悲愴、月光、テンペストまでの初期から中期に至るまでのピアノ曲の創作の源泉となったわけです。ペダルはまだ無く、代わりに鍵盤下部に装置された梃子を膝で操作する膝レバーが付いています。

今回、高音部にさらに2鍵を追加し、モデレーターという霧がかった神秘的な美音が出せるレバーを両手で演奏中でも可動させるよう膝レバーに改変(オリジナルは手動式)、18世紀末に広く流行した装飾も加えました。この1780年代から18世紀最後の20年間に製造されたウィーン式フォルテピアノは、300年にわたるピアノ史上最も繊細極まりないニュアンスに富む類稀な音色を持つと評されます。特にモデレーターを操作した際の音は、実際に弾いてみない限り筆舌には尽くし難い、形容出来ない音です。当時の演奏はこのモデレーターを頻繁に使っており、指示がなくとも譜面を見るだけでその箇所が分かるほどです。それは現代ピアノで古典派の音楽を弾く際にも手がかりの一つとなるでしょう。

フォルテピアノのレッスンで習う作品はモーツァルト、ハイドンなどのおなじみのソナタ、小品から始め、慣れてきたらクリスチャン・バッハ、エマヌエル・バッハ等のバッハの息子たちのソナタやロンドなどに親しみ、さらにはドイツ語圏以外の国の作曲家、A・ソレールやМ・クレメンティなどの美しくもあまり知られていない名曲なども取り上げます。楽譜も豊富に用意しております。